技術情報カード No.25

平成13年5月   



木材の浸透性改良法
-超音波を利用した注入処理効果-

 

はじめに

 木材の保存処理法については、技術情報カードNo.15(平成12年7月発行)で紹介しました。その中で述べたとおり、従来の加圧注入法はベセル法などを基本とした加圧・減圧条件の組合せで使い分けられています。しかし、処理時間の短縮や処理性、木材保存剤の均一浸透などに改良が求められています。そこで、今回は超音波振動を用いた注入処理の改善効果を調べるため試験を行いましたので、その結果の概要を報告するとともに、その他の浸透性改良法についても併せて紹介します。

浸透性改良法とは


@壁孔破壊処理法:木材保存剤の浸透通路になる壁 孔部分を破壊または分解して、木材自身の浸透性 を向上させる目的で施される前処理法です。処理  手法から生物的処理、化学的処理、物理的処理に 大別されます。
A刺傷処理法:木材は繊維直角方向の浸透性が繊維 方向の1/100〜1/10,000と著しく小さいため、木材表面に小さな穴を開けて浸透しやすい木口面を人 工的に作る処理法です。
B注入法の改良:新たな発想で処理性や注入性の向 上をねらった改良法で、乾式処理法、加減圧交換 法などがあります。今回の超音波を利用した注入  法も新たな注入処理の試みです。

試験方法

 木材保存剤の注入処理操作は、木材保存液中に木材を浸せきし、超音波振動をかける方法とし、超音波を用いない場合と比較しました。
 超音波処理には卓上型超音波洗浄器(東京理科器械、MUS−10D)を用いました。
 木材保存剤は、銅・アルキルアンモニウム系(以下ACQという)、アルキルアンモニウム系(以下AACという)、アクリル酸亜鉛・PEGMA(以下TASという)の3種類を用いました。
 試験に供する木材片は、徳島県産スギの辺材部を用いて、木口面20mm角、繊維方向200mmとなるよう切り出しました。その木材片を恒温恒湿器(タバイエスペック、PR4S)に入れ、含水率が15%以下になるよう調整しました。供試体数は各処理区10体、計60体としました。
 それぞれの処理方法で木材保存剤を試験体に注入し、10分後、20分後、30分後における各試験体の質量を測定し、注入量を算出しました。注入量とは注入処理終了後に木材中に残っている木材保存剤の量のことです。即ち、注入処理後と注入処理前の木材質量の差を求め、注入処理前の木材材積で除した値(kg/m3)で表します。

結果と考察

 図1〜図3に3種類の木材保存剤を用いて行った超音波処理と浸せき処理における10分毎の注入量測定結果を示します。全ての木材保存剤において、超音波処理による注入量は浸せき処理による注入量より多く、超音波振動の効果があることが分かりました。30分後における注入量をみると、一番多かったのはTASが92.6kg/m3、次いでACQが86.6kg/m3、AACが75.1kg/m3という結果になりました。木材保存剤の種類により差があり、AACは他の2種の木材保存剤に比べ、あまり効果が認められませんでした(図2)。これは、木材保存剤の粘度が影響しているものと考えられます。

図1 経過時間毎の処理別注入量(ACQ)

図2 経過時間毎の処理別注入量(AAC)

図3 経過時間毎の処理別注入量(TAS)

 図4に超音波処理による真の注入量を示します。これは、超音波処理の注入量と浸せき処理の注入量の差で、超音波振動による正味の注入効果を表しています。ACQでは時間経過に伴って注入量が増加し、注入性が改善する傾向にあります。一方、TASでは20分経過後に注入量が約10kg/m3で一定になりました。また、AACでは注入量が減少傾向にあることから、この処理法での効果はあまり期待できないことが分かりました。今後は、この様な木材保存剤の種類における差を解消し、汎用性のある処理法として実用化するため、加圧・減圧処理と超音波処理を組み合わせて注入する方法を検討する必要があると考えています。

図4 超音波処理による真の注入量


【引用・参考文献】
1)屋我嗣良ら:木材科学講座12 保存・耐久性 、  海青社(1997)
2)日本木材保存協会編:木材保存学入門 改訂版、  木材保存協会(1998)

内容に関するお問い合わせ先

徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所

木材利用担当 橋本 茂

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