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     貝毒のお話し
 環境増養殖担当 加藤慎治


 新聞等で報道されましたのでご存じの方も多いと思いますが、本年6月に小松島湾で採取されたアサリから食品衛生法の規制値(4MU/g)を大きく上回る16.9MU/gもの貝毒が検出されました。直ちに関係漁協では出荷規制が行われるなど関係者の方の努力もあって幸いにもこの貝を食べて中毒を起こされた方もなく無事終息しました。表1に示したように、平成5年以降5回アサリから規制値を超える貝毒が検出されています。そこで今回は貝毒とは何か?そもそもなぜ貝が毒を持つのか?また、貝毒による中毒被害を未然に防ぐために行っている対策についてご紹介します。

表1 過去の貝毒発生状況 −背景を黄色で示した事例は規制値(4MU/g)を超えたもの−
年度麻痺性・下痢性の別発生月発生海域原因プランクトン 毒量
(MU/g)
平成5麻痺性貝毒6月橘湾アレキサンドリウム・カテネラ2.2
麻痺性貝毒3月内の海アレキサンドリウム・タマレンセ2.4
麻痺性貝毒 3月椿泊湾アレキサンドリウム・タマレンセ2.8
平成6麻痺性貝毒4月内の海アレキサンドリウム・タマレンセ5.8
麻痺性貝毒4月橘湾アレキサンドリウム・タマレンセ2.1
麻痺性貝毒 4月椿泊湾アレキサンドリウム・タマレンセ2.4
麻痺性貝毒 6月小松島湾アレキサンドリウム・カテネラ2.5
平成7発生なし
平成8発生なし
平成9発生なし
平成10麻痺性貝毒6月橘湾アレキサンドリウム・カテネラ9.3
平成11麻痺性貝毒6月勝浦川河口アレキサンドリウム・カテネラ5.0
麻痺性貝毒12月内の海アレキサンドリウム・タミヤバニッチ6.6
平成12麻痺性貝毒6月勝浦川河口アレキサンドリウム・カテネラ2.2
平成13麻痺性貝毒6月勝浦川河口アレキサンドリウム・カテネラ2.9
麻痺性貝毒12月内の海アレキサンドリウム・タミヤバニッチ2.4
平成14発生なし
平成15麻痺性貝毒6月小松島湾アレキサンドリウム・カテネラ16.9

貝毒とは?
 貝毒とはアサリやカキなどの二枚貝類が体内に毒素を蓄積して起こる現象です。通常アサリやカキなどの二枚貝類は海水中を浮遊する珪藻などの植物プランクトンをエサにして生活しています。そして成長した貝を我々人間が食べているのです。ところがまれに海水中に貝毒の原因になるプランクトン、つまり毒を持ったプランクトンが大量に発生することがあります。このような貝毒原因プランクトンを貝が多量に摂取すると体内に毒成分が蓄積し貝が毒を持ってしまいます。この毒を持った貝を知らずに人間が食べてしまうと貝毒による中毒が発生するという訳です。ちなみに貝毒は魚類や巻き貝であるアワビ、サザエ等には起こりませんのでご安心下さい。
貝毒の種類と原因プランクトン  貝毒はその中毒症状により麻痺性貝毒と下痢性貝毒に分けられます。麻痺性貝毒の場合食後30分で口唇、舌、顔面のシビレが起こり、麻痺が進行すると呼吸困難で死に至ることがあります。また、下痢性貝毒は読んで字の如く激しい下痢が主な症状で、吐き気、嘔吐、腹痛を伴うこともありますが毒性は比較的弱く死亡例はありません。本県では麻痺性貝毒の発生はしばしばみられますが下痢性貝毒の発生はこれまで確認されていません。
 原因となるプランクトンは麻痺性貝毒、下痢性貝毒で種類は違いますがいずれも渦鞭毛藻というプランクトンの仲間です。麻痺性貝毒の原因種はアレキサンドリウム属のプランクトンでアレキサンドリウム タマレンセやアレキサンドリウム カテネラなどの種類が知られています。また、下痢性貝毒の原因種はディノフィシス属のプランクトンでディノフィシス フォルティ、ディノフィシス アキュミナータなどが知られています。

貝毒原因プランクトンの写真
図1 貝毒原因プランクトン
(左:ディノフィシス フォルティ,右:アレキサンドリウム タマレンセ)

 貝毒の毒性は、マウスユニット(MU)という単位で表されます。1MU/gとは二枚貝の可食部1g中に体重20gのマウスが15分で死ぬ毒性を含むことを意味します。体重60sの人間の致死量は3,000〜20,000MUと言われています。食品衛生法という法律では4MU/gを超える貝は不衛生品として販売してはならないことになっています。仮に冒頭でご紹介した16.9MU/gのアサリ(中型、可食部約3g)ですと約60〜400個食べると致死量に達することになります。
貝毒監視調査  貝毒による被害を未然に防ぐためには毒化した貝を早期に発見することが必要なのは言うまでもないことですが、貝の検査に時間が掛かるのと検査の回数が限られているため場合によっては手遅れになることが考えられます。そこで水産研究所鳴門分場では、県内の沿岸域に調査点を設け、貝毒原因プランクトンの動向を定期的に調査することによって貝毒の発生を早い段階で発見できるよう監視を行っています。また、貝毒原因プランクトンの発生状況をみながら併せて貝の検査も行っています。
 徳島県では「徳島県水産業貝毒対策事務取扱要領」が定められており、生産海域の監視は県水産課と県水産研究所が、流通経路の監視は県生活衛生課が行うことになっており、もし食品衛生法で定められている基準を超える貝毒が検出された場合、水産業界へは漁協を通じて出荷自主規制を行うとともに、一般の皆さんへはマスコミを通じて周知することになっています。
 貝毒は貝類養殖を営む漁業者の方の生産活動だけでなく、潮干狩りなどレジャーとして貝を採取する一般の皆さんの健康にも関わりますので、水産研究所鳴門分場では今後も貝毒の監視調査を継続し、アサリ、カキ等二枚貝類の食品としての安心安全を守っていけるよう努力したいと思います。最後になりましたが潮干狩り等に出掛ける際の貝毒情報につきましては、お気軽に水産研究所鳴門分場(TEL088-688-0555)までお訊ね下さい。


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