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徳島水研だより 第49号 (2004年01月発行)
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     目   次
海藻に付着する危険な生物の正体
漁業者によるアワビ中間育成の取り組み(安価な中間育成を目指して)
平成15年上半期の徳島県沿岸における漁海況の特徴
播磨灘で養殖ハマチに被害を与えた赤潮プランクトン「シャットネラ・アンティーカ」

  海藻に付着する危険な生物の正体
環境増養殖担当 棚田 教生


1.何かに刺される!
 今年の4月下旬、橘町漁協の採貝漁業者の方から、「橘湾で操業中に海藻の近くで何かに刺され、全身症状(疼痛、倦怠感)がでる。原因生物を調べてほしい」という依頼が水産課を通じて入りました。実際にお話を聞いてみると、刺されると次第に体がだるくなって思うように泳ぐことができなくなり、船に這い上がることも難しくなる(溺死する危険性もある)という深刻なものでした。また刺される場所はだいたいガラモ(岩場に生えるホンダワラ類)が生えているところで、刺される箇所は水中に露出している口の周囲(唇)だけということでした。どうやらガラモに付いている生物が怪しいという予測がたちましたが、これまで研究所内でもそのような話は聞いたことはなく、筆者自身も普段ガラモの周辺を潜水調査していますが、そのような経験は一度もありませんでした。

2.犯人は「小型クラゲ」だった
 なにはともあれ、現場の様子と海藻を見せてもらおうということで、よく刺されるという現地の海域に実際に連れて行ってもらい、潜水調査をおこないました。
 現場海域では水深2m〜5mの範囲に良好なガラモ場が形成されており(写真1)、そのガラモに小型の生物が付着しているのが水中で観察されました。他にも原因と考えられるような生物(魚類)がいないか海藻の周囲を注意深く観察しましたが、そのような生物は見つかりませんでした。
 その後、採取したガラモを研究所に持ち帰って調べたところ、ガラモに付着している小型のクラゲが見つかりました。独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所の担当の方に同定をお願いしたところ、このクラゲは「カギノテクラゲ」という有毒種であることが判りました。このクラゲはサイズこそ小型ですが強い刺胞毒を持っており、刺されると激痛とともに呼吸困難などの全身症状を伴うことから、重大な事故につながることが報告されています。神奈川県では実際に平成13年5月から6月にかけて、アワビ漁場で操業する潜水漁業者の間で本種に刺されたと考えられる事故が相次ぎました。今回橘湾で大の大人を一撃で苦しめた犯人も、実はこの小さなクラゲだったのです。
 本種はその名前のとおり、「鍵の(ように折れ曲がった)手」で海藻に付着しています。橘湾ではガラモに付着していましたが、カジメ(写真2)やアマモ(写真3)といった他の海藻(海草)にも付着していることが知られています。その後、7月に鳴門市沿岸でも海藻(ヒジキ)に付着したカギノテクラゲ(写真4)を発見しましたが、このクラゲは傘の部分の直径が1cm弱と小型でした。なお、本種は神奈川県では水温が15〜20℃の時期に多く出現しており、10℃を下回ったり、25℃を超えると活性が衰えることが分かっています。従いまして、本種は徳島県では春先から夏にかけての時期に発生する可能性が高いと言えます。
橘湾
図1 橘湾のガラモ場(水深2m〜5m)
カジメ
図2 カジメ
アマモ
 図3 アマモ


3.被害に遭わないために・・・
 今回、橘町の採貝漁業者の方々に被害をもたらしたのはカギノテクラゲであることが判明しました。では、今後同じような被害に遭わないためにはどうすればいいのでしょうか?

カギノテクラゲ
   図4 カギノテクラゲ(鳴門市折野沿岸:傘径9mm)

 このクラゲはやっかいなことに傘径が2cm未満と小型ですので、水中でこのクラゲを事前に発見して避けるということはまず無理です。ただ本種は普段海藻にくっついていてあまり遊泳しないので、海藻の周辺だけに気をつけていればよいということが言えます。それでも漁をしていてやむを得ず海藻に近づく際には、肌の露出が極力ないように工夫する必要があります。具体的にはフード(潜水帽)とグローブは必ず着用し、口の部分以外は水中に直接露出しないようにします。そして口の部分もグローブを付けた片方の手で呼吸器ごと覆うようにすれば海藻および有毒生物との接触はかなり防げるでしょう。
 また、本種は比較的穏やかな海域の浅い水深帯に生育する海藻に付着していますので、採貝漁業者の方以外にも、海水浴や磯遊び、ダイビングなど海で遊ぶ一般の方も注意が必要です(この場合は海藻のあるところに近寄らないようにすることでほぼ解決できます)。また海藻のあるところには、ハオコゼ(写真5)という鰭に毒を持つ小型魚が隠れていることが多いのですが、裸足でこの魚を踏んづけてしまうと大変です。もしカギノテクラゲやハオコゼのような危険生物の知識を持ちあわせていない一般の方が遊泳中などに刺されると、毒自体は大したことが無くても知識がないためにパニックに陥ることがあり危険です。

ハオコゼ
         図5 ハオコゼ

 実は県内ではこれまで今回のような海藻に付着する生物による被害の報告例はほとんどなく、原因も判っていませんでした。今回橘町の漁業者の方からの報告を受けて調査を行い、初めて詳しいことが判りました。海の中にはまだまだ我々が知らない危険な生物がたくさん潜んでいるのです。我々潜水調査をおこなうものにとっても注意が必要なのは言うまでもありません。海に入るときは、危険な生物の種類や生息場所などについてできるだけ正確な知識を持っておくこと(参考図書:「ダイビング上達クリニック2」(マリン企画)など)、そして何よりも謙虚な気持ちを常に持って、むやみに海の生物に近づいたり触ったりしないことが大切だということを今回改めて教えられた気がしました。

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  漁業者によるアワビ中間育成の取り組み(安価な中間育成を目指して)
 増養殖担当 広沢 晃

1.はじめに
 海部郡内の各漁協では,アワビ資源を増やそうと人工種苗の放流を積極的に行なっています。アワビ種苗の放流では,稚貝を少しでも大きくして放流することが,放流効果をあげるための1つの手段であると考えられます。放流種苗の生残率は放流サイズが大型なほど高くなるからです。漁場環境により適当な放流サイズは異なりますが,一般的に放流サイズは貝殻の長径が30mm以上が望ましいといわれています。しかしながら,アワビ種苗を大きくして放流するには当然コストがかかります。そこで,アワビ稚貝の中間育成をできるだけ安価に効率よくおこなうことができるかどうかが重要になってきます。ここでは,経費をできるだけかけない中間育成試験に取り組んだ海南町の浅川漁協の事例を紹介します。

2.中間育成コストの削減方法
 中間育成のコスト削減のポイントは,アワビ籠による海での飼育と餌のコンブの自家栽培の2点です。陸上での飼育では電気代や水槽施設などコストがかさむため,海面にアワビ籠(写真1〜2)を吊るす方法で飼育を試みました。また,餌のコンブは自家栽培することで確保しました。餌のコンブの栽培は,12月に県漁連から種苗を購入し,ワカメ養殖と同様の方法で種苗をロープに挟み込んで海面筏方式でおこないました。コンブは12月初旬に養殖を始めると1月下旬には藻長約1m程度になり投餌可能なサイズになります。4月には藻長が2m程度まで伸長します。それ以降は水温の上昇とともに先端が枯れたり,付着物で汚れたりしますが,アワビの餌として6月一杯まで使えました(写真3,図1)。

アワビ籠
写真1 アワビ籠
餌のコンブと稚貝
写真2 餌のコンブと稚貝
コンブ養殖状況
写真3 コンブ養殖状況

コンブ生長状況
図1 養殖コンブの生長と海水温
3.中間育成結果
 アワビの中間育成試験は,餌料海藻のコンブが確保できる期間に合わせて2月〜7月におこないました。2月に20mm種苗を,4月には10mm種苗をアワビ籠に収容し,中間育成を開始しました。収容密度は,10mm種苗で7,000個/籠(500個/u),20mm種苗で1,200個/籠(100個/u)でした。
  このような方法で2002年と2003年の2ケ年取り組んだ結果を表1,図2〜3に示しました。2ケ年間の結果から,20mmサイズの稚貝では,2月〜7月までの約5ケ月間で10mm程度大きくなり,放流適正サイズである30mmサイズになりました。また,その歩留まりは6割程度でした。一方,10mmサイズの稚貝では,飼育期間が4月〜7月までの3ケ月弱と短いこともあり,約3mmの成長にとどまり,歩留まりは6割程度でした。種苗のサイズ別の成長状況は,20mmサイズでは日間成長量が平均0.07mm/日で成長率はまずまずの結果であったと思われます。10mmサイズでは日間成長量が0.04mm/日でした。これは,10mmサイズの稚貝では歯舌の発達が十分でなく,生コンブ は固くて食べにくかったことが原因の一つと思われました。解決策として,コンブを一度干して,柔らかくした乾燥コンブを与えるとか,葉肉のやわらかなヒロメを使うことなどが考えられました。

2002中間育成結果
  図2 2002中間育成結果
2003中間育成結果
  図3 2003中間育成結果


  表1 中間育成結果(2002-2003)
2002-2003中間育成結果
4.残された課題
  以上,コスト削減に主眼をおいた中間育成事例を紹介しましたが,今回の中間育成試験の問題点として育成期間があります。今回は餌のコンブの供給可能な時期に合わせて2月〜6月に行いましたが,実際に栽培センターから種苗が供給されるのは,4月,9月,12月です。そこで,種苗の入荷に合わせて中間育成を開始できるとともに,放流適正サイズまで大きくするためには,年間を通じて適当な餌料を確保することなど,周年飼育が可能になる環境作りが必要です。このように問題点はまだ残っていますが,今後とも,漁業者の手による安あがりな中間育成方法を模索していくことで,効果的な種苗放流が実現することを期待しています。

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  平成15年上半期の徳島県沿岸における漁海況の特徴
(※ 漁海況とは,水温や潮流等の海の環境と漁模様の状況のことです)
 海洋資源担当 住友 寿明

 水産研究所では,漁業調査船「とくしま」による海洋観測を実施して海況情報を収集するとともに,標本とする漁協(8漁協)に対して漁模様の調査をおこない主要な魚種の漁獲量を調べています。そして,これらのデータや人工衛星画像,水産研究所等の汲み上げ海水温を編集し,週間漁海況情報としてタイムリーな情報の提供をめざしています。また,年3回開催される長期予報会議における,太平洋海域の予報文作成の基礎データとして利用しています。さらに,これらのデータは主要な魚種の資源量の推定にも応用可能です。今回はこれらのデータの他に衛星情報等を加え,今年の上半期における徳島県の漁海況の特徴をまとめてみました。
 まず,紀伊水道沖を流れる黒潮の流路については,次のとおりでした。
・室戸岬沖では,2月末まで概ね接岸傾向で推移しました。3月から4月上旬は「やや離岸」でしたが,その後,5月下旬まで「かなり離岸」で,5月末からは「やや離岸」で推移しました図1)。
・潮岬沖では4月上旬まで概ね「接岸」で推移しましたが,その後,5月末まで「やや離岸」,6月からは「接岸」で推移しました(図2)。
室戸岬離岸距離
図1 室戸岬沖の黒潮離岸距離(海上保安庁海洋速報 参考)

潮岬離岸距離
図2 潮岬沖の黒潮離岸距離(海上保安庁海洋速報 参考)


 黒潮の離接岸表現の基準は,室戸岬沖の場合,黒潮の流軸が岬の真南25マイル以内にある場合を「接岸」,25マイルから45マイルまでを「やや離岸」,45マイルから65マイルまでを「離岸」,65マイル以上を「著しく離岸」,潮岬沖の場合,黒潮の流軸が岬の真南26マイル以内にある場合を「接岸」,26マイルから56マイルまでを「やや離岸」,56マイルから86マイルまでを「離岸」,86マイル以上を「著しく離岸」としました(川合(1972)黒潮と親潮の海況学.海洋物理学U,東海大学出版会)。なお,主軸の位置については海上保安庁海洋情報部のデータを参考にしていますが,海上保安庁海洋情報部における主軸の位置の求め方については,まず黒潮の北縁を以下の5項目を総合的に解析して決定し(@表面水温水平分布図を作成し,等値線の幅が混んでいる海域A表面海流矢符図を作成し,2ノット以上の海域B200m水温水平分布図を作成し,15〜16℃を目処に等値線が北側に混んでいる海域C遠州灘に発生する冷水渦の南方Dそのほかに人工衛星の海面高度計のデータなど),黒潮北縁から13マイルの所を黒潮の最強流速帯として黒潮の流軸としています。
 黒潮に伴う黒潮分枝流の状況は,2月末まで紀伊水道外域和歌山県側から暖水が波及し,反時計回りの流れがみられました。3月は室戸岬沖の黒潮が離岸するに伴い,紀伊水道外域徳島県側からも暖水の波及がみられました。その後,紀伊水道外域の黒潮分枝流は西向きまたは反時計回りの流れが中心でしたが,4月下旬から5月末にかけて,一時的に紀伊水道内部和歌山県側を中心に暖水の波及がみられました。
 海洋観測による水深10m層の水温については次のとおりです(表1)。
表1 平成15年上半期における徳島県周辺海域の海区平均水温
海区-2月3月4月5月6月
播磨灘本年値8.288.7210.3813.6117.43
平年値9.088.6310.1213.7617.11
偏差の目安やや低め平年並み平年並み平年並み平年並み
紀伊水道本年値11.4413.0515.3716.8419.74
平年値11.7311.3312.9215.9718.57
偏差の目安平年並み高めかなり高めやや高め高め
海部沿岸本年値15.8318.0117.8420.4223.07
平年値16.2215.8116.7619.0021.07
偏差の目安平年並みかなり高めやや高め高めかなり高め
・播磨灘海区(鳴門市北灘町沖)では,2月に「やや低め」でしたが3月以降は「平年並み」でした。
・紀伊水道海区(紀伊水道内)では,2月が「平年並み」,3月が「高め」,4月は「かなり高め」,5月は「やや高め」,6月は「高め」であり,3月以降高い傾向にありました。
・海部沿岸海区(紀伊水道外域徳島県沿岸)では,2月が「平年並み」,3月が「かなり高め」,4月は「やや高め」,5月は「高め」,6月は「かなり高め」で,紀伊水道海区と同様に3月以降高い傾向にありました。
 水温の偏差の目安として用いられる「やや高め」,「平年並み」等といった表現は,平年偏差と比較して統計的処理を行ったものです。なお,1月は漁業調査船が船体検査でドック入りしていたため観測できませんでした。
 漁況については,マイワシが平年比4%,シラスを除いたカタクチイワシが平年比30%,ウルメイワシが平年比20%,マアジが平年比28%,サバ類が平年比44%の漁獲量にとどまり不漁でした。そのほか,イカナゴも平年比10%で不漁でした。いっぽう,今春における紀伊水道のシラス漁は豊漁で,とくに4月の漁獲量は平年の約4倍近くでした。また,3月下旬から5月下旬にかけて徳島県の太平洋側でカツオが豊漁でしたが,魚体は小さいものが中心でした。さらに,ハモとブリも豊漁でした。その他,目立ったところでは,海部郡の標本とする大型定置網で4月中旬から5月下旬にかけてヒラマサが,5月中旬から下旬にかけてイボダイ(徳島ではボウゼと呼ばれています)がまとまって入網したことがあげられます。
 長期予報会議の徳島県周辺海域における予報や週間漁海況情報,海洋観測の結果については当ホームページに掲載していますので興味のある方はみてみませんか。

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  播磨灘で養殖ハマチに被害を与えた赤潮プランクトン「シャットネラ・アンティーカ」

 環境増養殖担当 萩平 将
シャットネラ  シャットネラ・アンティーカ(以下「シャットネラ」という。)は海水中に生息する植物プランクトンで、古くは海産ミドリムシとかホルネリアとか呼ばれていたこともありました。
 このプランクトンは、長さ約120μm(1μmは1mmの千分の1の長さ)の紡錘型(写真)で、光合成によって海の栄養素を吸収し、通常は1日1回の分裂をすることで増殖します。
 シャットネラは毎年出現していますが、条件が揃えば赤潮(プランクトンによって海水が着色する状態)まで増殖し、海水1ml当たり数百個になるとハマチを殺します。
 シャットネラ赤潮は、徳島県では過去に6〜9月に発生し、昭和47年から昭和62年まで、魚類養殖業に度々大きな被害を与えてきました。平成に入ってからも何度か赤潮を形成していま したが、表層だけの発生や一部の限られた水域での発生に治まっていたため、本県の魚類養殖が被害を受けることはありませんでした。
 しかし、平成15年7月に播磨灘で発生したシャットネラ赤潮により、本県の養殖ハマチ291千尾が死亡し、6億4千万円の被害が出てしまいました(香川県の被害を合わせると被害額は合 計11億3千万円にのぼります)。
 写真:シャットネラ・アンティーカ

   では、なぜ今年シャットネラの赤潮が発生し養殖ハマチに被害が出たのでしょうか。

○ 赤潮が発生した理由

 シャットネラ赤潮は、過去の発生事例とこれまでの調査結果等から、
   1 増殖するために必要な窒素、燐といった栄養素が海水中に十分含まれている。
   2 栄養素を競合する他の植物プランクトンが少ない。
   3 穏やかな晴天が続く。
 という条件が揃うと発生する危険性が高いことがわかっています。
 今年、シャットネラが増加した時の環境条件は、「降雨が多く、栄養素は陸から十分に供給さ れていた。シャットネラ以外の植物プランクトンは少なく、曇りや雨の日が多かったものの、 海が大きく荒れることはなかった。」ことから、曇や雨が多かった以外は前記条件1〜3がほぼ 揃っていたことになります。
 日照時間は少なかったものの、他の植物プランクトンがほとんどいなかったため、シャットネ ラだけが表層で徐々に増加し、赤潮を形成してしまったと考えられます。

○ 被害が発生した理由
 シャトネラが赤潮を形成しても分布が表層だけの場合、魚は赤潮の層の下で生きていられます が、中層まで数百細胞になると水深の浅い漁場で被害が出る可能性が高くなり、昭和62年のよ うに底層まで1ml当たり数百個になってしてしまうと養殖ハマチは逃げる場所を失い全滅して しまいます。
 平成15年のシャットネラの鉛直的な増殖状況を図にしました。7月12日までは表層で増加し ていましたが、表層で赤潮になった直後の7月13日、気温の低下によって海水が混合し(冷や された表層の海水が沈み、下の暖かい海水が表層に上がるために海水が混ざり合う)、表層で増 殖していたプランクトンが中層まで拡散してしまいました。その後、14〜15日にかけて増殖し、 20m層で100細胞を越えたため、水深の浅い場所(水深20〜25m)にある養殖生け簀では、魚 の逃げ場所がなくなり被害が発生したと考えられます。
 被害の出たポイントは、シャットネラが表層で赤潮になった時に表層から中層の海水が混ざっ てしまったという点で、残念ですがタイミングが悪かったとしか言いようがありません。
      増殖図
                図 シャットネラ・アンティーカの増殖推移

○ 赤潮観測の必要性
 「魚が死んでしまうのなら、調査しても仕方がないのでは?」と考える方がいるかもしれませ んが、今年の場合、シャットネラの増殖に気づかず養殖ハマチに給餌していれば、魚の赤潮耐久 力が低下(魚の酸素要求量が増加する。)し、餌を食べるためにシャットネラの多い表層へ近づい て来るため、もっと被害が大きくなっていたと考えられます。定期的な調査結果のデータ及び顕 微鏡観察等から得られる情報から増殖予測を行い、漁業者に赤潮発生の注意を促すことにより被 害を少なくすることができたと思われます。
 赤潮の発生予測は、常に変動している自然界の様々な環境条件や生物が複雑に関連している生 き物の動向予測ですので、100%とは言い切れませんが、それに近い情報を漁業者に提供し、本県 の魚類養殖業(生産額約29億円:平成14年徳島県農林水産統計)の手助けをしていきたいと考 えています。

○ 海水等の安全
 近年、食品の安全性に対する消費者の関心が高まっていますが、シャットネラ赤潮によって魚 が死ぬ理由は、高密度のシャットネラが鰓に影響を与えた結果、呼吸機能が低下して窒息死する ものであって、海水中に魚が死ぬような毒物等が発生するものではありません。ですからシャッ トネラ赤潮で魚が死んだからと言って、赤潮が出た水域や生き残った養殖魚には、人間に悪影響 を与えるような物質が存在しないことを書き添えておきます。 
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