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徳島水研だより 第61号 (2007年03月発行)
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     目   次
こんなに大きく育ったよ−小学4年生がワカメ養殖に挑戦−
アユ冷水病の感染経路の解明と防疫対策
ニザダイ,ブダイによるサガラメの食害についての一考
食用禁止の魚〜バラムツとアブラソコムツ〜

  こんなに大きく育ったよ−小学4年生がワカメ養殖に挑戦−
環境増養殖担当 加藤慎治 
Key word ;ワカメ,洋食,那賀川町,中島漁業協同組合,小学生,収穫作業

 平成19年1月24日に、阿南市那賀川町の出島海岸において小学生によるワカメ収穫作業がおこなわれました。これは体験学習として阿南市立横見小学校の4年生17名が地域の特産物であるワカメの養殖にチャレンジしたもので、水産業に関心を持ってもらうことを目的とした阿南市の漁業振興事業の一環としておこなわれました。養殖は地元中島漁業協同組合の協力でおこなわれ、私も中島漁協からお誘いを受けお手伝いをさせていただきました。今回は事前学習から収穫までの様子をご紹介します。

○ワカメってどうやって育つの?
 実際にワカメを養殖する前に、まずはワカメがどんな所に生えていて、どんな風に大きくなっていくのかを知らなければなりません。そのための事前学習ということで平成18年11月1日に中島漁協の武田輝久さんとともに横見小学校を訪れワカメの基礎知識についてお話をさせていただきました。私がワカメの生態や一般的なことについて、養殖方法や加工方法については武田さんが、事前に児童のみなさんから頂いた質問に答えるという形式で授業をおこないました(写真1,2)

写真1 授業風景(筆者)
写真1 授業風景(筆者)
写真2 授業風景(武田氏)
写真2 授業風景(武田氏)


 素朴な疑問から、ちょっと勉強してきたなというものまで、研究に携わってはいても普段あまり気にしたことがないような多くの鋭い質問が寄せられました。小学4年生は好奇心、探求心の塊です。質問は「どうしてワカメという名前がついたの?」、「ワカメには種類があるの?」、「ワカメはどうやって育つの?」、「ワカメは外国でもとれるの?」など多岐に渡り、それぞれについて説明させていただきました。また、ワカメの生態を説明する為に児童の皆さん一人一人にワカメの「配偶体」と「幼葉」を配布し、観察してもらいました。初めて見る「ワカメの種」に目を輝かせ、とても興味を持って貰えたようです。
同様に武田さんにも「ワカメの養殖方法」、「養殖にかかる費用」、「ワカメの弱点は?」など多くの質問が浴びせられました。武田さんはその一つ一つについて実際に使用する養殖ロープや糸ワカメ等のワカメ製品を示しながら丁寧に説明をされ、児童の皆さんも手にとって見たり感じたりすることで理解を深めていました。

○いざ養殖!
 事前学習の次はいよいよ養殖体験です。平成18年11月16日に中島漁港でワカメの種付け作業を体験してもらいました。2〜3p程の芽が付いた種糸を10p程度の長さに切り20mの養殖ロープに40p間隔で差し込んでいきます(写真3)。児童の皆さんと保護者の方々がぎこちない手つきながらも一生懸命差し込んでいました。初めての体験に教室での事前学習の時とは違う活き活きとした笑顔がこぼれていました。

 ロープへの種付けが終わると養殖イカダへ移動です。武田さんがあらかじめ出島海岸沖合にセットしていた養殖イカダに種付けしたロープを張っていきます。児童の皆さんも武田さんとともに漁船に乗り込み、作業の見学やお手伝いをしました(写真4)。こうして4本の養殖ロープを張り込んで作業が終了しました。児童の皆さんがセットしたワカメはちゃんと育つのでしょうか。

写真3 ワカメの種付け
写真3 ワカメの種付け
写真4 筏にロープを張っています
写真4 筏にロープを張っています


○いよいよ収穫
 平成19年1月24日、いよいよ養殖したワカメの収穫をむかえました。児童の皆さんが漁船に乗り込み養殖ロープごとワカメを船上へと引き揚げました(写真5) 。種付けの時に2〜3pだったワカメは見事1.5〜2.0m程度に生長していました。引き揚げられた約200sのワカメは港でトラックに移され横見小学校へ運ばれました。小学校に到着したワカメを児童の皆さんが鎌でロープから切り離していきます(写真6)。中にはワカメと背比べをしている児童もおり、その大きさに驚いていました。ワカメは500cずつ袋詰めされ児童や先生が持ち帰ったそうです(写真7)。初めて自分たちで養殖したワカメの味はどうだったでしょうか。

写真5 大きく育ったワカメを引き揚げています
写真5 大きく育ったワカメを引き揚げています
写真6 鎌を使ってワカメを切り離していきます
写真6 鎌を使ってワカメを切り離していきます
写真7 丁寧に袋詰めしていきます
写真7 丁寧に袋詰めしていきます


○最後に
 今回、中島漁協さんからお誘いを受けわずかながら体験学習のお手伝いをさせていただきました。このような総合学習を通じて地域の産業にふれることによって海、生き物、環境そして水産業に興味をもってもらえたならこんなにすばらしいことはありません。子供達の質問は素朴で改めて勉強させられることが多く、私個人にとっても貴重な体験となりました。


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  アユ冷水病の感染経路の解明と防疫対策
環境増養殖担当 谷本 剛 
Key word ;アユ,冷水病,おとりアユ,人工産アユ,感染経路,遺伝子型,PCR,防疫,遺伝的多様性

はじめに
  冷水病は,フラボバクテリウム・サイクロフィラム(Flavobacterium psychrophilum ,写真1)という細菌を原因とする疾病であり,元来は北米のマスの病気です。わが国では昭和60年(1985年)頃からギンザケ,ニジマスで見られるようになり,アユでは昭和62年(1987年)に本県の養殖場において琵琶湖産のアユ種苗から初めて発生が確認されました。その後,養殖アユに留まらず,全国各地の天然アユにも蔓延が確認され,遊漁等への影響を含め大きな社会問題となっています。平成15年に調査した天然水域におけるアユ冷水病発生状況によれば,実に30都道府県(64%)の河川で発生が確認されており(アユ冷水病対策協議会,2005),近年のアユの資源量が減少した要因の一つとも考えられています。アユは重要な内水面漁業の対象種であり,釣りの対象種としても人気が高いことから,資源の回復と増大を目的とした放流が積極的におこなわれてきました。今日では全国各地の河川において冷水病に感染した琵琶湖産のアユ種苗が放流されたことにより,冷水病が全国の河川に蔓延したものと考えられています。
 しかしながら,琵琶湖産アユ種苗を放流せず人工産アユ種苗のみを放流している河川や,種苗放流を実施せず天然遡上アユのみに依存する河川においても冷水病の発生が報告されていることから,放流された琵琶湖産アユ種苗以外にも感染源が存在すると考えられています。本県においても,県南部を流れる清流海部川では,人工産アユ種苗のみを放流しているにも関わらず,アユ漁解禁後の6月に冷水病による斃死が度々見られ問題になっています。こうしたことから,当水産研究所では,アユ種苗を放流する河川における冷水病の感染経路を明らかにし,効果的な冷水病の防疫対策の確立に資することを目的として調査を進めています。

冷水病の原因細菌(フラボバクテリウム・サイクロフィラム)

写真1 冷水病の原因細菌(フラボバクテリウム・サイクロフィラム)。アユ以外にもサケ科魚類,コイ科魚類等で冷水病原因細菌の保菌が確認されている。
冷水病に感染したアユ

写真2 冷水病に感染したアユ。顎の欠損・出血,体表の穴あきといった症状が見られる。
分子生物学的手法による冷水病の感染経路の解明
 防疫とは「伝染病の侵入(発生)や流行を未然に防ぐこと」であり,アユ冷水病の防疫対策を講じるためには,冷水病菌がどのように侵入し増殖するのか,その侵入・感染経路を解明することが重要です。冷水病の侵入・感染経路を明らかにすることができれば,これを断ち切ることにより冷水病の蔓延を防止することができます。
 近年,水産分野の研究においてPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)法等の分子生物学的手法が広く用いられるようになり,魚介類の病原体の検出にも応用されています。PCRとは短時間に目的とする特定のDNA領域を数十万倍以上に増幅させる反応で,アユの冷水病菌もPCRによる検出法が開発されています。また,冷水病菌は主にAまたはB型およびRまたはS型に分けられ,その組み合わせにより4つの遺伝子型(AS,AR,BS,BR型)があることが確認されています。
 これら分子生物学的手法により,感染しても発病せず症状が現れない魚や,河床の付着藻類など河川環境中における極めて微量の冷水病菌の検出が可能となりました。また,検出された冷水病菌の遺伝子型を調べることにより,冷水病の侵入・感染経路を推定する手掛かりが得られるようになりました。
 そこで,このような手法を用いて,海部川における冷水病の感染経路を解明するため,平成17年度に海部川のアユ(天然アユ,放流アユ,おとりアユ)と海部川に生息するアユ以外の魚類の冷水病菌の保菌検査および付着藻類,アオミドロや河川水といった河川環境中の冷水病菌の分布について調査を実施しました。

検出された冷水病菌とその遺伝子型
1 海部川のアユの冷水病菌保菌検査
 海部川に放流された徳島県の人工産アユ種苗からは,放流時点では冷水病菌は検出されませんでした。また,同じ魚群の一部を当水産研究所において産卵期まで飼育しましたが,その期間中,冷水病による死亡および症状は見られませんでした。そのため,本種苗は冷水病菌を保菌していないと考えられます。
 海部川周辺で販売されている琵琶湖産のおとりアユからは,AS型の冷水病菌が高率に検出されました。特に10月の成熟した検体からは,下顎の欠損,鰓の貧血といった冷水病の症状を示すものが見られました。
 天然アユでは4月,5月に採集した遡上稚アユからは,冷水病菌は検出されませんでした。しかしながら,6月に採集した検体からAS型の冷水病菌が検出され始め,産卵期である10月下旬に採集した検体では,下顎の欠損,体表の穴あきといった冷水病の症状を示すものが見られ,AS型の冷水病菌が高率で検出されました。11月,12月に採集した孵化直後の流下仔アユでは,弱いながら陽性反応を示す検体が確認され,その遺伝子型はいずれもAS型でした。

2 河川環境中の冷水病菌分布調査
 アユ漁の解禁前である4月,5月に付着藻類,アオミドロからAS型の冷水病菌が高率に検出されました。また,6月に冷水病による斃死が多く見られた中・上流域で採集した付着藻類からは,全検体で冷水病菌が検出されました。検出された遺伝子型は,同時期の斃死アユ検体で見られた遺伝子型と同じAS型でした。その後もASおよびAR型の冷水病菌が少ないながら検出され,9月の陽性検体からは初めてB型の冷水病菌が検出されました。12月にはアユ産卵場の下流で採集した河川水からも冷水病菌が検出されました。検出された遺伝子型は,産卵期のアユ検体で見られた遺伝子型と同じAS型でした。河川にアユが存在しないと思われる冬期の12月下旬および1月に採集した検体からは冷水病菌は検出されませんでした。

3 アユ以外の魚類の冷水病菌保菌検査
  海部川の代表的な魚であるオイカワ,カワムツ,ウグイおよびボウズハゼについて冷水病菌の保菌検査を実施したところ,オイカワで冷水病菌が検出されました。しかしながら,他の報告では,アユから他の魚類へ,他の魚類からアユヘの冷水病の伝播はないものと考えられていること,またオイカワから検出された遺伝子型は通常この魚では見られないAS型であったことから,鰓にアユ由来のAS型の冷水病菌が付着していたものと考えられました。

4 海部川における斃死アユの冷水病検査
 6月に中・上流域でアユの大量斃死が見られ(写真3),これら斃死アユから高率に冷水病菌が検出されました。その遺伝子型はAS型であり,一部AR型の混在が疑われる型も確認されました。なお,これら斃死アユは側線上方横列鱗数(側線から背鰭までの鱗の数で人工産か天然産か区別できる)から全個体とも人工産アユと判別されました。

冷水病により死亡したアユ

写真3 冷水病により死亡したアユが溜まった本流中流域の淵。検査の結果,全て放流魚であった。
 
海部川における冷水病の感染源は?
 海部川においては,琵琶湖産アユは放流しておらず,冷水病菌を保菌していない人工産アユのみ放流していることから,放流魚が冷水病の感染源である可能性は低いものと考えています。一方,本研究の結果から,琵琶湖産アユであるおとりアユは冷水病菌を保菌しており,また,別途実施した聞き取り調査の結果からも,釣客によるおとりアユの河川への持ち込みおよびおとりアユ販売店からの飼育排水が冷水病を誘発している可能性が示唆されたことから,琵琶湖産アユが冷水病の感染源となっていることが強く疑われるところです。
 藻類からはA型に属する冷水病菌が優占して検出され,特におとりアユの持ち込みがないアユ漁解禁日以前にもかかわらず高率で同菌が検出されました。このことから,A型に属する冷水病菌は,河川環境中に常在している可能性が強いことが示唆されました。これら藻類が冷水病の感染源になるかどうかについては今後さらに検討する必要がありますが,検出されたのはアユ由来型と思われるA型に属する冷水病菌であったことから,アユへの感染の可能性は十分にあると思われます。
 流下仔アユから冷水病菌が検出された原因としては,産卵期に親となるアユが高率で保菌,発症していることから,親魚から卵,卵から仔魚へと病気が伝播する垂直感染の可能性が疑われました。しかし一方で,アユの産卵場の下流で採取した付着藻類や河川水からも冷水病菌が検出され,その遺伝子型が流下仔アユで検出された型と同じAS型であったことから,別のアユ親魚が排出した冷水病菌や河川環境中の冷水病菌により仔魚が感染する水平感染の可能性も考えられます。いずれにせよ流下仔アユが保菌している冷水病菌が,今後,海洋生活期・遡上期といったアユの各生活期においてどのような動態を示すか調査していく必要があると思われます。

海部川における冷水病の感染経路

図1 海部川における冷水病の感染経路
河川における冷水病蔓延防止対策について
 本研究から,冷水病の感染経路を断ち切るには,第一に冷水病菌を保菌しているおとりアユを河川に持ち込まないようにすることです。そのためには,冷水病菌を保菌していないことを証明した人工種苗をおとりアユとして用いる等の対策を講じる必要があると思われます。また,活力がなく体表に異常があるようなおとりアユの売買をしない,釣ったアユおよび使用したおとりアユはすべて持ち帰るといった取り組みも大切です。
 さらに,海部川では付着藻類,アオミドロなど河川環境中からも冷水病菌が検出され,おとりアユから排菌された冷水病菌が藻類等に付着して河川環境中に周年にわたり常在している可能性が高いことがわかりました。せっかく大量のアユ種苗を放流したにもかかわらず,これら種苗が次々と感染して死んでしまっては元も子もありません。現在,海部川に放流されている人工産アユは15代に亘って長期継代されています。この間,アユの成長の良さ等を追求してきた結果,人工産アユは天然アユと比較して遺伝的多様性が著しく低下していることが判明しています (徳島水研だよりVol.57「徳島県における海産・琵琶湖産および人工産アユ集団の遺伝的特性について」参照)。 著しい遺伝的多様性の低下は,病気や環境変化への耐性など生活力に関わる能力が低下すると言われており,6月に見られた冷水病による大量斃死魚が全て人工産アユであったのはこの理由によるところが大きいと推察されます(写真3)。このように遺伝的多様性の低下した種苗の放流が冷水病を蔓延させる一原因となっている可能性が考えられることから,放流する種苗は長期継代された種苗に比べて冷水病に強いことが明らかとなってきている継代歴の比較的初期の種苗を放流すべきと考えています。このため県では,2年前に吉野川の天然種苗を親魚として, これまでの継代種苗とは別に新たな種苗を生産し始めました。
   今後,行政機関だけでなく内水面漁業関係者や釣り具屋などのおとり販売店,そして釣り人などアユ釣りに関わる人すべてが一体となって冷水病防疫に対する意識を持ち,協力し合い,冷水病菌を持ち込まない対策を実行するとともに,病気に強い種苗を放流することで,海部川を始め県下の各河川が全国に誇れる「健康なアユがたくさん釣れる川」になることを目指していければと思っています。
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  ニザダイ,ブダイによるサガラメの食害についての一考
 増養殖担当 竹内 章 
Key word ;磯焼け,食害,ニザダイ,アイゴ,ブダイ,サガラメ

磯焼けとは?
 「磯焼けとは何ですか?」といった質問をされることがよくあります。磯焼けとは一般的に,コンブやホンダワラといった大型褐藻類の藻場,いわゆる海中林が火事の焼け跡のように海から消えて回復しないことを言います。磯焼けの主な原因として,環境的要因と人為的要因が考えられます。環境的な要因として,水温や栄養塩といった海況の変動による枯死,藻食動物による食害が挙げられます。藻食動物とは雑食性ながら,主に植物を食べる動物のことを指します。一方,人為的な要因として,経済活動によって海水が濁り海藻の光合成が妨げらた結果,海藻が大量に枯死する場合等が挙げられます。
 ここでは,徳島県における藻食性魚類による海藻の食害について紹介させて頂きます。
アイゴ
写真1:アイゴSiganus fuscescens(通称アイ,バリ,アイノバリ)。干物,刺身で食べられ,美味である。毒針があるため,触る際には要注意である。
ブダイ
写真2:ブダイCalotomus japonicus(通称エガミ,ゴンタ)。
冬は臭みがとれて美味である。刺身や煮付けにして食べられる。
ニザダイ
写真3:ニザダイPrinurus scalprum(通称サンノジ,クロハギ)。
鍋や刺身として地元利用されている。
藻食動物について
 藻食動物には,ヨコエビ類や貝類,魚類と多種多様な生物が存在します。高級水産物であるアワビ類も,藻類を主食としており,特に大型褐藻類であるサガアラメ(海部沿岸ではアラメと呼ばれているが,標準和名ではサガラメと呼ばれる)やカジメ等を好んで摂餌します。
 自然界において藻類と藻食動物の量的なバランスが保たれている時は問題はないのですが,藻食動物が増えすぎた時にはこれらの生物の食害による磯焼けが発生すると言われています。実際に食害を起こす藻食動物として,ウニ類と魚類があります。ウニ類ではムラサキウニやバフンウニ等,魚類ではアイゴ,ブダイ,ニザダイ(写真1〜3),メジナ,イスズミ等が挙げられます。全国的にみると,北部ではウニ類(キタムラサキウニ,エゾバフンウニ等),南部では魚類による食害が主となっています。
 私達は平成11年から美波町日和佐地区沿岸で海藻の植生調査を継続しています。その過程でサガラメを食べるブダイ,ニザダイを観察しています。写真4は,ブダイとニザダイに食害を受けたサガラメです。ニザダイの群れ(13尾)がサガラメの茎上端に残っていた葉状部をつついていたところをブダイ(2尾)が追い払い,葉状部を食べていました。周辺にあったカジメ等は無事でしたが,背の高いサガラメだけが食べられて茎だけとなり,約10m四方のサガラメが食害を受けてしまいました。このように,徳島県でも藻食性魚類による食害が見られています。
 一方,美波町の伊座利地区ではサガラメの純群落が広大に広がっており,見事な海中林が形成されています(写真5)。サガラメのような大型褐藻類は,低水温,高栄養の海況条件で成長が良いことが知られています。サガラメ,カジメの芽が出始める冬期には,紀伊水道から河川水を含んだ冷たい海水が流入することから,伊座利沿岸の水温は低下します。それにより,アイゴ,ブダイ,ニザダイといった藻食性魚類による食害から守られていると考えていますが,詳細は不明です。
 今後も,水温の変化に伴う南方系の魚類の増減,それによる海中林の増減等を調べていく必要があると考えています。
藻食性魚類による食害対策
海況の変動による磯焼けの場合,海況が好転しない限り,磯焼けの回復は困難であり,現状では有効な対策は見つかっていません。食害による磯焼けの場合,藻食動物の駆除や防護柵の付いた藻礁を用いた藻場造成を行うなどの藻食動物対策が試みられています。
 近年,魚による食害を低減させ,藻場を回復させる手法の一つとして,魚を漁獲し,海藻への食圧を低下させる方法が注目を集めています。これは特別なことをするのではなく,積極的に藻食性魚類を捕らえ,上手に利用するというものです。徳島県では伊勢エビを対象とする刺網や,沿岸魚を対象とする小型定置網漁業が盛んです。これらの漁具にはアイゴ,ブダイ,ニザダイ等藻食性魚類が比較的まとまって漁獲されます。残念ながら,徳島県では,これらの魚の知名度が低く,時期によっては磯臭さがあることから,消費者にあまり喜ばれていないのが現状です。
 しかしながら,漁業者や漁協の職員さんは,これらの魚を上手に調理して食べます。血抜きをして内蔵を潰さないように除去した後,アイゴやニザダイは干物や刺身等に,ブダイCalotomus japonicusは煮付け等に調理されます。また,地域によっては,美味しい魚として積極的に利用されています(藤田大介,野田幹雄,桑原久美(編著),2006.海藻を食べる魚たち-生態から利用まで-(磯焼け対策シリーズ,1),pp.167-205,成山堂書店)。ただし,毒針のあるアイゴの鰭には注意が必要です。また,ブダイやニザダイの仲間には内臓や筋肉に毒が蓄積される種類もありますが,流通の過程できちんと判別されますので,魚屋さんやスーパーで購入するものは安心です。これらの魚は,特に冬美味しくなるので,機会があれば,一度試してみてはいかがでしょうか。

 このように,私たちが藻食性魚類を積極的に食べることは,食卓を豊かにするだけではなく,藻場の保護にもつながるという一石二鳥の面白い関係にあると言えます。
食害を受けたサガラメ
写真4:2006年06月06日,美波町日和佐沿岸で観察されたブダイ,ニザダイに食害を受けたサガラメ。葉状部がほとんど食べ尽くされている。
サガラメ海中林
写真5:2006年06月05日,美波町伊座利地区で観察された見事なサガラメ海中林。

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  食用禁止の魚〜バラムツとアブラソコムツ〜
 海洋資源担当 守岡 佐保 
Key word ;バラムツ,アブラソコムツ,日和佐,牟岐,厚生省通知,食用禁止

 平成19年2月7日に,日和佐町漁業協同組合の販売担当職員の方から「タチウオに混じって見慣れない魚が釣られたので 調べてほしい」と問い合わせの電話がかかってきました。早速,同漁協へ図鑑を持って駆けつけると,体長約1m,体重7.9kgと 体長約60cm,体重3.6kgの黒っぽい魚が水揚げされており(写真1),図鑑と照らし合わせたところ,バラムツ Ruvettus pretiosus という深海魚であることが判明しました。

写真1 平成19年2月7日に日和佐町漁協に水揚げされたバラムツ 
体長約1m,体重7.9kg

写真1 平成19年2月7日に日和佐町漁協に水揚げされたバラムツ Ruvettus pretiosus 体長約1m,体重7.9kg

 バラムツの筋肉には,ワックスエステルが多く含まれ,大量に食べると消化できずに腹痛や下痢を起こします。 以前は練り製品の材料とされていたこともあるようですが,昭和45年9月4日に厚生省通知(環乳第83号)により 販売が禁止されました。
 このため,今回のバラムツも市場に出回ることなく廃棄処分されました。
 有毒魚として食品衛生法で販売が禁止されている魚には,バラムツの他にオニカマス(シガテラ毒),イシナギ(過剰ビタミンA) 及びアブラソコムツ(ワックスエステル)があります。アブラソコムツはバラムツと同じ深海魚で,過去に牟岐で延縄で漁獲されて いることが記録されています(写真2)。
写真2 平成8年11月29日に牟岐東漁協でヨコワ延縄により水揚げされたアブラソコムツ

写真2 平成8年11月29日に牟岐東漁協でヨコワ延縄により水揚げされたアブラソコムツ Lepidocybium flavobrunneum

 この2種はいずれもスズキ目クロタチカマス科に属し、よく似ていますが、尾の付け根付近に隆起が見られるのがアブラソコムツです。
 なお,販売が禁止されている魚の情報はインターネットで調べると,いろいろな自治体の市場衛生検査所などのHPで詳しく紹介されています (例:東京都札幌市)。
 バラムツとアブラソコムツについてさらに調べていると,「食用禁止魚」とは異なる一面があることも分かりました。 ルアーフィッシングの対象魚として,近年,愛好家の中で人気が高まっているそうです。
 これらの魚は,日中水深400〜500mの深いところにいるのですが,夜間に50〜200m水深帯まで浮いてきます。 そこをジギングで狙って,強靭な遊泳力と格闘するのがこの釣りの醍醐味のようです。その鋭い歯(写真3 バラムツの口)に 耐え得るバラムツ・アブラソコムツ専用の釣具が商品化されていることから,愛好家の数は多いと思われます。

   
写真3 バラムツの大きな口と鋭い歯

写真3 バラムツの大きな口と鋭い歯

 徳島県の近くでは,和歌山や高知県などがよいポイントとなっているようですが,今回漁獲されたように徳島県も 釣りの漁場として期待できるかもしれません。
 一方,バラムツやアブラソコムツはかつお・まぐろ延縄漁で多く混獲されます。漁業界から要望を受け,水産食品加工の研究機関では, 魚肉の有効利用のため,有害なワックスエステルを取り除き,魚肉を練り製品の原料とする技術開発が行われています。
 正確な資源量は不明ですが,バラムツやアブラソコムツの資源量は数千トンと推定されています。 水産庁によりアブラソコムツ等の未利用資源の活用のため,水産バイオマスの資源化技術開発事業として, 利用加工技術や混獲量の推定調査が行われているようです。
 今回は,有毒であるが資源の可能性もある,また釣りの対象として人気上昇中というバラムツとアブラソコムツについてご紹介しました。  また,「珍しい魚が上がった」というときは,水産研究所に情報をお寄せください。
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